公民館が生まれ変わり、フレンチレストランとホテルに―。長野市戸隠の中社地区でもともと解体予定だった「旧中社公会堂」に28日、レストラン「awai(あわい)」とホテル「RITA(リタ)戸隠」がオープンする。戸隠には大勢の観光客が訪れるものの、滞在時間の短さが課題。地区内外の業者や個人が共同で設立した会社「awai」が、宿泊者に宵や早朝といった「間(あわい)」の時間も楽しんでもらおうと企画した。
旧中社公会堂は100人以上の住民が出資して約70年前に建設され、消防団の詰め所や祭りの練習、伝統工芸の竹細工の作業場などに使われた。20年ほど前、近くに新しい公会堂ができ、維持費がかさんだため取り壊しが検討されていた。
リノベーションを経て、全体的に装飾がないシンプルなデザインとした。かつて和室と小さな厨房(ちゅうぼう)だった1階は白い壁と木のインテリアが映える明るいレストランに。大広間だった2階はベッドやソファが配された客室2部屋となった。ホテル名は「継承」などを意味する「HERITAGE(ヘリテイジ)」や「利他」に由来する。
全国各地で古民家再生に取り組む林雄二郎さん(40)が同社の代表取締役に就任。地元で室町時代から続く宿坊を営む極意(ごくい)憲雄さん(76)が共同代表、地元出身で実家が宿坊の武井智史さん(32)が取締役に就き、準備を進めてきた。「宿坊とはターゲット層が違う」と極意さん。市によると、戸隠の年間の観光客数は約150万人とされる一方、宿泊者数は35万人程度。武井さんは「プラスアルファで宿泊者を増やしたい」と話す。
移住者や地元住民の雇用にも貢献する。マネジャーの成田ひかるさん(27)は2月に福岡県から移住。早朝に戸隠神社を訪れ「鳥や水の音、日の差し込み方が徐々に変わるところを実感できた」。シェフの堀田剛さん(38)は東京から移住。これまでフランスなどで修行し、都内の飲食店で料理長を務めた。コースに生かそうと信州の食材を研究し、「ソバやジビエ(野生鳥獣肉)といった県内産品にこだわりたい」と意気込む。
年内には宝光社地区で長年空き家だったかやぶき屋根の古民家を復活させ、一棟貸しの宿も開く予定。ランチは2500円から、宿泊は1人1泊2食付きで2万5千円から。問い合わせは同社(電話026・219・3444)へ。