■県立美術館で来月開幕へ解体作業
江戸時代後期の浮世絵師、葛飾北斎(かつしかほくさい)(1760~1849年)が制作に協力した県宝「上町(かんまち)祭屋台」を運び出すための解体作業が13日、保管する上高井郡小布施町の北斎館で始まった。長野市の県立美術館で7月1日~8月27日に開く信濃毎日新聞創刊150周年記念特別展「葛飾北斎と3つの信濃」に出展するための準備で、北斎館によると屋台が町外に出るのは初めて。
屋台は1845(弘化2)年、小布施の豪農・豪商で絵師の高井鴻山(こうざん)(1806~83年)が私財を投じ、北斎に協力を依頼して制作した。高さ約4・8メートル、幅2・4メートル、奥行き約3・8メートル。重さは約1・9トンで、150個余の部品から成る。2階中央には中国の古典「水滸伝」に登場する軍師「皇(公)孫勝」の木彫が飾られており、北斎がデザインしたと伝わる。
この日は、地元の建設会社社長永井寛治(ひろはる)さん(57)ら町内の大工計10人が運送業者と協力して解体に着手。屋台を囲うように足場を組み、1、2階の手すりを解体した後に木彫を台座から慎重に外し、数人がかりで抱きかかえるようにして取り出した。北斎が描いた天井画のレプリカも外した。14日には解体を終え、県立美術館に運び込む。
北斎館によると、戦前までは町の祭りで屋台が曳行(えいこう)されていた。祭りのたびに屋台の組み立てと解体を繰り返していたという。永井さんは「作業は緊張の連続だが、屋台の構造や解体する技術を継承していくための良い機会にしたい」と話していた。