京都の祇園に次いで、名店が軒を連ねる御所南エリアの日本料理店「御料理 樋渡(ひわたし)」が先月、砺波市鷹栖の古民家に移転した。店を営むのは、松木和也さん(49)と妻で女将(おかみ)の茜さん(44)。茜さんの母親が富山市出身という縁で、子ども3人と移住した。松木さん夫婦は「砺波の食材にこだわり、地域に貢献したい」と話している。
松木さんは山形県出身。高校卒業後に料理人を志し、東京で14年、京都で10年修業した。2013年に京都で独立。開業間もなくミシュラン一つ星を獲得し、国内外の幅広い年代の客をもてなしてきた。
次第に子どもたちが成長し、町家が手狭になってきた。松木さんが、京都で振る舞う日本料理に限界を感じていたこともあり、環境を変えるため移転を決断。茜さんが幼い頃からなじみのあった県内を中心に古民家を探していたところ、鷹栖に住む80代の夫婦が高齢を理由に住まいを移ることを知った。太い梁(はり)を組む伝統工法「ワクノウチ」を持つ家で、「古い物を長く使い、次世代に残したい」と考えていた松木さんにとって魅力的だった。美しい田園風景にも引かれた。
1122平方メートルの敷地には、住宅兼店舗と蔵、駐車場を備える。店は3部屋全12席で、京都で使っていた机や椅子などをそのまま活用。食材選びにこだわり、氷見漁港や高岡市地方卸売市場、道の駅砺波などに自ら出向いて仕入れる。松木さんは「新鮮な海のものや山のものがそろう」と話す。
茜さんの両親も来年滋賀から移住し、同居する予定という。松木さんは「店を目的地として砺波の交通機関や宿泊施設を使って来てもらえるようにしたい」と意気込む。
店は事前予約制で、不定休。営業時間は要相談。問い合わせは「御料理 樋渡」、電話0763(55)6623。