●北前船主集落の文化 北海道の海産物や地元野菜ふんだん
かつて北前船交易で栄えた加賀市橋立地区の住民有志が、藩政期から伝わる郷土料理を現代風にアレンジした「茶番御膳(ちゃばんごぜん)」を開発した。北前船が運んだ北海道産の昆布やニシン、地元産の野菜を使った煮物、焼物を輪島塗や伊万里焼の器で提供する。男衆が航海で留守の間、家を守る女性たちの食事会「茶番」の料理が基になっており、発祥の物語性を含めて橋立の新たな名物として発信する。
北前船主集落として隆盛を誇った橋立では、船乗りの男衆が航海で家を留守にすることが多く、集落に残る女性たちは寂しさを紛らわすため、飲食しながら会話を楽しむ茶番を頻繁に開いていたと伝わる。
住民有志でつくるまちづくり団体「加賀橋立北前船ツーリズム実行委員会」は北前船に由来する茶番文化に着目。茶番で食べられていた素朴で栄養価の高い料理を現代人の嗜好(しこう)に合わせ、ご当地グルメとして売り出すことにした。
茶番御膳は、大麦でつくった「おちらし粉」を番茶で溶いたものを食前に飲む。メニューはニシンの昆布巻きや白あえ、メギスの甘辛煮、イカ飯、ローストビーフなどで、北前船が運んだ輪島塗や伊万里焼の器に盛り付ける。
現在は橋立に観光客を呼び込むためのモニターツアーで提供しており、試食者からの意見を取り入れて味をさらに磨き上げる。将来的には橋立の飲食店で茶番御膳を常に食べられるようにすることを目指す。
実行委の木村茂樹事務局長は「北前船主集落で行われていた茶番の料理を観光資源に生かし、地域活性化につなげたい」と話した。