加藤さん(左)に点訳本の完成を報告する綿谷さん=穴水町立図書館

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ローエル穴水紀行、点訳本で触れて 金沢の綿谷さん5年がかり 穴水町図書館に寄贈

北國新聞(2023年7月7日)

 1889(明治22)年に穴水町を訪れた米国の天文学者パーシバル・ローエルの紀行文の点訳本が6日、同町立図書館に寄贈された。手掛けたのは金沢市寺町2丁目の綿谷ウメさん(79)で、5年がかりで仕上げた全4巻はA4判計561ページ。原著では「ボラ待ち櫓(やぐら)」など穴水の風土が紹介されており、綿谷さんは「視覚障害がある人にもローエルが伝えた穴水を読んでほしい」と話している。

 綿谷さんは金沢女子短大(現金沢学院短大)を卒業し、日米の大学の研究所に勤務。その後、山梨県内の大学の寮母をしていた頃に点字を学び始めた。現在は金沢国際交流財団のボランティアとして金沢や野々市に住む外国人に日本語を指導している。

 綿谷さんが点字に訳したのはローエルの紀行文の日本語訳「能登 人に知られぬ日本の辺境」。ある文学講座のテキストで紀行文を知り、日本語訳を担当した詩人の故・宮崎正明氏と知り合いだったことから親しみを感じ、文章にも興味を引かれて「最初で最後の挑戦」(綿谷さん)を始めた。

 紀行文でローエルは「西方の海岸に奇妙な形を見せて突き出している一つの半島にひきつけられた」と東京から能登半島へ旅立ったことや、ボラ待ち櫓について「怪鳥ロックが見つけて、巣を選んだ場所とでも形容できようか」などとつづっている。

 綿谷さんはパソコンで1文字ずつ点字の形通りに入力する作業を続けた。読み方の分からない人名や地名は、穴水町ローエル顕彰会の加藤真会長に電話で尋ね、構成は県視覚障害者情報文化センター(金沢市)が協力した。点訳本はインターネットを通じて点字図書を利用できる「サピエ図書館」に登録された。

 点訳本を見た加藤さんは「見事に出来上がった。すごい快挙だ」とたたえ、綿谷さんは「79年間生きてきた証し。ローエルをしのぶローエル祭に参加したい」と話した。

 ★パーシバル・ローエル(1855~1916年) 米ボストン生まれ。冥王星の存在予測と火星の研究で知られる天文学者。明治期に数度にわたって日本を訪れ、1889年に能登を旅行し、91年にこの時の旅行記を出版した。帰国後は天文学の研究に没頭。没後、冥王星が発見され、ローエルの予測が裏付けられた。

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