越前和紙の産地在住の作家による作品展「和紙 Paper Works~我ら、越前和紙の里に住んでるんやぁ...~」の前期展は7月8日、福井県越前市の卯立の工芸館で始まった。同市粟田部町のアーティスト杉本博さんが、漉(す)かれた和紙の縁のけば立った耳の部分を生かした独自の造形作品を披露している。
杉本さんは、紙漉き職人が均一な商品を求められる中で「唯一個性が表れる部分」と和紙の耳に着目。産地の工房から譲り受けて40年余り前から作品に生かしており、17点を展示した。
紙の神様「川上御前」の頭文字を取った「Kシリーズ」は、墨に漬けた耳を何枚も並べて波形や濃淡の違いを連続的に表現した造形作品。耳の重なりを産地が積み重ねた歴史に見立て、部分的に取り入れた朱色の耳で川上御前を表した。
「40年の記憶」は、ねじった和紙で表現した白蛇を耳のパネルと組み合わせた大作。墨を浸した竹紙を手でもんで風合いを出した「痕跡」、竹紙で石をつつんだ「つつむ」などのシリーズも並ぶ。
前期展は8月6日まで。同市大滝町の版画家小林桐美さんによる後期展は同12日から9月10日まで開かれる。7月16日午後2時から、両作家と和紙職人らによるトークイベントがある。入館料は大人300円(高校生以下無料)、火曜休館。