菅沼合掌造り集落にあるトンネルでの日本酒熟成について、JA職員らに説明する山崎社長(左)

菅沼合掌造り集落にあるトンネルでの日本酒熟成について、JA職員らに説明する山崎社長(左)

富山県 砺波・南砺・五箇山

合掌集落のトンネルで地酒熟成 南砺の三笑楽酒造、輸出も視野

北日本新聞(2023年8月8日)

 南砺市上梨(平)の三笑楽酒造が、同市上平地域の菅沼合掌造り集落のトンネルに日本酒を貯蔵している。世界遺産で熟成させた酒を観光振興の呼び水にしようと、酒を地元の宿泊施設や飲食店などで使ってもらい、誘客に役立てる。将来は海外への輸出を目指し、酒を通して五箇山を世界に発信していきたい考えだ。

 日本酒は、長期保存によって水分子とアルコール分子が化学反応を起こし「角が取れたまろやかな味」になるとされる。県内では、室温や湿度が一定しているダムの中で保管する酒造りが進む。

 三笑楽酒造の山崎英博社長は「五箇山の自然や文化に育まれた」という物語がある酒造りを考えていた。菅沼合掌集落造り集落にあるトンネル内に空きスペースがあることを知り、世界遺産を取り巻く風土の中で、酒を熟成させることを思いついた。

 空きスペースは、南砺市が観光設備として利用していた約55平方メートル。一升瓶を最大で約4千本収容できる。市と交渉し、国税庁の補助金を受けて貯蔵設備を整えた。ダムの中ほどではないが、猛暑の現在でも涼しく感じられるという。

 第1弾は、ことし3月に試験的に800本を収めた。このうち500本はJA富山市から酒米を買って造り続けている同JAオリジナルブランド「剣誉(つるぎほまれ)」、残りは三笑楽の純米大吟醸だ。2年ほど保管する予定という。今後、データを取りながら最適な熟成条件を模索し、貯蔵本数も増やす。

 海外の消費者はストーリー性のある商品を好むため、山崎社長は輸出も構想する。「世界遺産での熟成は聞いたことがない試み。五箇山の自然や文化をセットにして酒をPRし、地域の食も楽しんでもらえるといい」と話す。

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