●保存会、10月に披露
加賀市黒崎地区に藩政期から伝わる市無形民俗文化財の作業歌「黒崎土(ど)ねり節(ぶし)」の保存会が今年、4年ぶりに活動を再開した。住民有志でつくる保存会は担い手の高齢化が進み、コロナ下もあって休眠状態だったが、地域固有の唄と踊りを絶やすまいと、新メンバー3人を加えて練習を始めた。10月に開かれる地元の祭りで披露する予定で、会員は伝統文化を次代に継承しようと意気込んでいる。
土ねり節は、藩政期に農民がため池の堤防を造成する際に声を合わせた作業歌が由来とされる。「ハァーヨイヤサ」の合いの手に合わせ、「横ばい」と呼ばれる木の棒やくわを使って堤防の補修作業を模した踊りをするのが特徴となる。
保存会は、土ねり節が市無形民俗文化財に指定された1981(昭和56)年に発足。民謡発表会の出演や地元児童への指導を行ってきたが、近年は会員の減少や高齢化に加え、感染対策のため集まって練習する機会がなくなっていた。
2018年に入会した自営業堂下亜也さん(36)が地域で受け継がれてきた文化が途絶えかねないと危機感を抱き、コロナの5類移行に合わせて活動を再開しようと、知人に声をかけて回った。友人の自営業飯貝(いいがい)真美子さん(40)、入野太刀夫(たちお)会長(87)の長男隆さん(66)らが加わり、会員は10人となった。
6月から月1回練習しており、堂下さんが経営する黒崎海水浴場の浜茶屋「入のや」で開かれた7月17日の練習会では、会員8人が唄に合わせて土を踏み固める踊りを繰り返し確認した。飯貝さんは「土ねり節の歴史や独特な音楽に引かれた。しっかり踊れるように練習を重ねたい」と意気込んだ。
保存会は10月29日に加賀市橋立地区会館で開かれる文化祭「はしたてフェスタ」で土ねり節を披露する予定で、入野会長は「新会員と力を合わせ、土ねり節を後世に継承したい」と話した。