越前和紙の産地在住の作家による作品展「和紙 Paper Works~我ら、越前和紙の里に住んでるんやぁ...~」の後期展が、福井県越前市の卯立の工芸館で開かれている。同市大滝町のアーティスト小林桐美(とうび)さんが、東京電力福島第1原発事故の処理水海洋放出に疑問を投げ掛ける和紙造形を展示している。9月10日まで。
壁一面を埋める墨の木版画約100枚に描かれているのは、同事故後の除染廃棄物を詰めた袋「フレコンバッグ」。事故がもたらした長期にわたる地域への影響と、水の恵みによって受け継がれてきた和紙を対比させ、土地の環境を守ることの意味を問いかけている。
会場中央につるされたクジラの和紙造形は、木の枝を背骨にした長さ約5メートルの体に、フレコンバッグの木版画を張り付けた。処理水海洋放出について「ちっぽけな人間がそんなことをやっていいのかという思いを、命の奇跡を示す海の生き物で表現した」(小林さん)。造形に使われた巨大な和紙の制作過程もパネルで紹介している。
入館料は大人300円(高校生以下無料)、火曜休館。