石川、富山両県の企業で、工場見学を再開する動きが広がっている。新型コロナの感染拡大で休止していたが、5類移行を受けて一般客の受け入れを復活。見学に体験メニューを加えるなど工夫を凝らす企業もあり、自社の製品や取り組みをアピールしている。一方で、人手不足の中、再開に伴って対応する人員配置に苦慮する企業も見られる。
●体験メニュー
北陸コカ・コーラボトリング(高岡市)は8月、砺波市の砺波工場で、2020年2月から休止していた一般見学の受け入れを再開した。自社の歴史や製品の説明を聞くほか、缶やペットボトル、瓶の飲料製品が製造ラインを流れる様子などを見ることができる。
再開に合わせて、ペットボトルのキャップで作ったモザイクアートなど工場内の展示物を一新。さらに、飲料の製造工程で出るコーヒーかすを使って、ランプシェードを作る体験メニューを加えた。SDGs(持続可能な開発目標)の学習にも役立ててもらう。
コロナ禍前の受け入れは1日3回だったが、現在は1回に限定している。休止中に見学専門の社員が配置換えとなり、現在は他の仕事をしながら見学の対応をしている。担当者は「自社の魅力を多くの人に実感してもらいたい」と話した。
福光屋(金沢市)は10月27日に酒蔵見学を3年8カ月ぶりに再開した。新たに予約システムを導入して、1カ月先まで予約できるようにして利便性を向上させた。専門スタッフ1人を新たに雇用して対応している。担当者は「蔵内の香りや雰囲気を感じて、純米酒の良さを知ってもらっている」と語る。
数馬酒造(能登町)も11月から1日1組の見学を受け入れている。見学後に自社製品の購入につながっており、担当者は「受け入れの効果は大きい」と手応えを示す。
●有料化
若鶴酒造(砺波市)は、10月から個人客向けに大正蔵と三郎丸蒸留所の見学を有料化した。以前は団体、個人問わず無料で受け入れ、職員が対応していたが、コロナが落ち着いてから来場者が急増。見学対応に人手を割けず、有料化して完全予約制とすることで見学者数をコントロールしたい考えだ。
来場者に対応するスタッフが足りず、担当者は「1日に何回もガイドに行って、見学に張り付いていることもある。本当にウイスキーが好きな人に楽しんでもらうためにも、有料化は必要なことだと思う」と話した。