高岡市国吉地区特産の「国吉りんご」が存続の岐路に立っている。昨年の収穫量は果樹の老木化、猛暑、鳥獣被害の"トリプルパンチ"によって少なくとも過去10年で最少となり、売上高も激減した。生産従事者の平均年齢は約70歳。生産を続けるには若い木、若い担い手が必要だが、どちらも確保が難しい状況だ。生産団体は「このままだとリンゴ作りを諦めなくてはならない日がすぐに来てしまう」と危機感を募らせる。
国吉地区では1990年にリンゴの栽培が始まり、2008年には生産者らでつくる農事組合法人・国吉農林振興会が発足。現在は約5ヘクタールで「サンふじ」「王林」などの品種を栽培し「国吉りんご」として直売所などで販売している。
振興会によると、年ごとの収穫量は悪天候や台風の襲来などによりばらつきはあるものの、2010年代は35~71トンを確保していた。だが、果樹の老木化により徐々に減少傾向となり、近年は20トン前後となっていた。
昨年は猛暑と鳥獣被害が収穫減に拍車をかけ、16・1トンにまで落ち込んだ。夏期に暑い日が続き、実が強い日差しで日焼けしたり、水分不足で大きくならない事例が発生。さらに9月に入っても暑さが続いた影響で色づきが進まず、正規品として販売できないものも多かった。
カラスやサル、カモシカによる食害も目立った。特にカラスは大群で飛来し、実をついばんでいったという。振興会の伊東寿代表理事は「これまでに見たことがない大きな群れで、高岡の街中からやってきているのではないか」とみる。
対策として、若木への植え替えや、灌水(かんすい)設備、防鳥ネットの整備などが考えられるが、売り上げが減って投資に回せる資金的余裕がなく、振興会にとってはどれも高いハードルだ。
将来を見据えて若手就農者を迎えたいものの、伊東代表は「近年はもうからないからと離農する生産者も多い。そんなところに若手は魅力を感じてくれないだろう」とこぼす。
果物の栽培は、米作りに比べ行政の補助が手薄であることにも触れ「せめて法人の運営、経営サポートをより充実させてくれればいいのだけれど」と願っている。