妻和子さんとともに創作への意欲を語る田崎さん=黒部市宇奈月温泉のホテル

妻和子さんとともに創作への意欲を語る田崎さん=黒部市宇奈月温泉のホテル

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輪島塗「立て直す」  92歳蒔絵師田崎さん  宇奈月避難も創作意欲衰えず

北國新聞(2024年1月30日)

 輪島塗の蒔絵師(まきえし)、田崎昭一郎さん(92)=輪島市水守町=が、避難先の黒部市宇奈月温泉で創作意欲を募らせている。制作途中の作品を残して黒部へ逃れた田崎さんは「仕事をしたくてうずうずしとる」と明かし、輪島塗業界については「輪島は輪島塗で持ってきたまち。仲間と一丸で立て直したい」と復興への決意を語った。
 
 田崎さんは輪島の自宅兼工房で母屋の屋根が損壊したものの、建物自体に大きな被害はなく、しばらくは妻の和子さん(87)と自宅にとどまっていた。その後、周囲に促されて26日に他の住民とともに富山に移り、現在は宇奈月温泉のホテルで過ごしている。
 
 地震前には、子どもの頃によく遊んだ一本松公園(輪島市)にあった見事な松の根っこを題材にした作品を手掛け始めたが、完成前に被災した。「輪島の家は水道さえ復旧すれば戻れる。早く戻って仕上げたい」。長引く避難生活にもどかしさを募らせる。

 能登半島地震では、漆器業界の仲間や知り合いも多く被災し、中には安否不明の人もいる。国重要無形文化財である輪島塗は2007年の地震でもダメージを受けたが、今回はいまだに被害の全容がつかめず、「壊滅的かもしれん」と不安を漏らす。

 しかし、輪島を支えてきた輪島塗業界の再建に向けた思いは強く、「業界を挙げて復興を果たさんならん」と力を込めた。

 田崎さんは輪島市で上塗職人の長男として生まれ、15歳で蒔絵師一后一兆氏に弟子入り、輪島高定時制に通いながら修業を積んだ。28歳で日展初入選以来、現代美術展、伝統工芸展など多数入賞し、1996年に紫綬褒章、2008年には北國風雪賞を受けた。

 伝統的な文様から他にない独創的なデザインの作品まで幅広く手掛けた。2015年の北陸新幹線金沢開業に合わせて設けられたJR金沢駅コンコース門型(もんがた)柱(ちゅう)には輪島塗プレート「歓喜躍動」が飾られた。15年に集大成として制作した飾り棚は精緻な蒔絵で大名行列を描いており、海外でも展示された。

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