ガリ版印刷の技術を用いた助田さんの孔版画の遺作展=福井県越前市新在家町の紙の文化博物館

ガリ版印刷の技術を用いた助田さんの孔版画の遺作展=福井県越前市新在家町の紙の文化博物館

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繊細ガリ版、技しのぶ 越前市で助田篤郎さん遺作展

福井新聞(2024年3月7日)

 通称「ガリ版」と呼ばれる簡易印刷機「謄写版」の県内最後の職人で、2022年に亡くなった福井県鯖江市の助田篤郎さんの遺作展が、越前市の紙の文化博物館で開かれている。草花をモチーフとしてガリ版技術で制作された繊細な孔版画や、助田さん愛用の仕事道具が並び、創作の歩みを伝えている。

 ガリ版は明治時代に開発された印刷技術。ろうで表面加工した和紙をやすりの上に載せ、鉄筆で文字や絵柄を描くことで微細な穴を開けた謄写版を制作。その穴からインクを押し出して版画に仕上げる。

 助田さんは1980年ごろ、ガリ版印刷職人の父茂蔵さんの後継者として働き始めた。草花を描く画家としても知られた茂蔵さんの水彩画を、ガリ版刷りの孔版画にする創作活動を重ねてきた。体力面の不安のため21年に仕事から退き、22年3月に亡くなった。

 画材の一部に越前和紙が使われていた縁から、同博物館が借り受けた遺作の孔版画約50点を展示した。ノブドウやハマヒルガオ、ヒイラギなどを題材にした作品は、刷りを繰り返して少しずつ違った色が重ねられ、実や花の濃淡、葉脈の様子が緻密に表現されている。

 制作に使用された謄写機やローラー、極薄の雁皮(がんぴ)紙の表面をろうでコーティングした原紙などの貴重な道具が併せて展示され、丁寧な手仕事の様子をしのばせる。色ごとに作製した版を並べ、刷り重ねて1枚の作品に仕上がる過程が紹介されている。助田さんが作品をしたためた私家本も披露されている。

 3月25日まで。会場では助田さんの版画作品の販売会が開かれている。入館料300円(高校生以下無料)。

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