星図の巻物「格子月進図」の復元巻物を手に持つ佐々木さん。「光る君へ」で使用された複製品は大河ドラマ館で展示されている=福井県越前市武生中央公園内まさかりどんの館

星図の巻物「格子月進図」の復元巻物を手に持つ佐々木さん。「光る君へ」で使用された複製品は大河ドラマ館で展示されている=福井県越前市武生中央公園内まさかりどんの館

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40年前の復元星図に光 「格子月進図」大河1話に登場

福井新聞(2024年3月26日)

 福井県越前町の元数学教師の男性が約40年前に復元した平安時代に使用されていたとされる星図の巻物「格子月進図(こうしげっしんず)」の複製品が、現在放送中の大河ドラマ「光る君へ」で安倍晴明が使う小道具に採用され、越前市武生中央公園まさかりどんの館の大河ドラマ館で展示されている。巻物は空襲で焼失した星図を写真や文献をたどってよみがえらせており、男性は「こんな形で再び日の目を見る日が来るとは」と喜んでいる。

 男性は、越前町に住む佐々木英治さん(86)。若い頃は、教師を務める傍ら数学史の研究などに熱心に取り組んでいたという。丹生高に赴任していた1979年ごろ、坂井市三国町の瀧谷寺に伝来する星図「天之図」(国の重要文化財)の調査を依頼されたのをきっかけに、格子月進図に着目し研究にのめり込んでいった。

 格子月進図は、天空の月の運行を中心に各星座の運行を正確に測定、計算して図表に表したもの。朝廷で天文学を任されていた初代当主、安倍晴明も使用したとされ、花園・後醍醐天皇(1308~39年)の頃に活躍した安倍家12代目当主、安倍泰世が写し直した巻物が後世に伝わっていた。

 佐々木さんは焼失前に撮影された写真を頼りに、さまざまな文献や資料などと照らし合わせ、約4年がかりで復元に成功した。復元した星図は円図、方図、奥書の3部構成で、巻末に解説などを載せた縦約26センチ、長さ約2メートル70センチの巻物。200部を印刷し、個人や団体などに提供したという。

 「光る君へ」では、佐々木さんの復元した巻物を参考に作られた複製版が使用された。昨年4月ごろ、NHK側から打診があり、「格子月進図やほかの星図の存在に興味を持ってくれる人が増えるのでは」との思いで快諾したという。

 格子月進図は1話冒頭、ユースケ・サンタマリアさん扮する安倍晴明が巻物と夜空の星座と照らし合わせ、都に訪れる凶事を予言するというシーンで登場した。巻物が大きく映し出されたのは2秒ほどだったが、ドラマの後の展開が気になるような印象的な場面だった。佐々木さんは「1話冒頭で使われるとは知らず、すごく驚いた」と話す一方、「復元した星図が資料として認められたようでうれしい。苦労したかいがあった」と顔をほころばせる。

 大河ドラマ館内では、「光る君へ」の衣装や登場人物を紹介するパネルなどとともに披露されている。

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