福井県おおい町芝崎区に飛来したクロヅル=1月22日

福井県おおい町芝崎区に飛来したクロヅル=1月22日

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福井県おおいに珍客、クロヅル越冬 住民そっと見守り

福井新聞(2019年5月29日)

 福井県おおい町に昨年11月から今年3月末にかけ、ツルの一種「クロヅル」1羽が飛来し越冬していたことが5月28日までに分かった。町が県自然保護センターに確認したところ、県内で越冬する姿が確認されたのは初めて。幼鳥とみられることから、住民らは驚かせないように周囲に情報を伝えず、そっと見守り続けた。

 日本野鳥の会自然保護室(東京)の葉山政治室長(62)によると、クロヅルは全体的に灰色で、首の一部が黒いのが特徴。羽を広げたときの大きさは約180センチ。ユーラシア大陸北部に広く生息し、主に中国南部で越冬することが多い。まれにナベヅルなどにつられて日本に飛来する。

 全国でも確認できる数は少なく、多くのツルが飛来する鹿児島県出水市のツル博物館「クレインパークいずみ」の今年1月13日の羽数調査では、1万3645羽のツルのうち、クロヅルはわずか10羽だった。

 昨年11月、おおい町芝崎区の水田に飛来したのを、地元の猟師の男性が「見慣れない鳥がいる」と写真を撮り、町に連絡。野鳥の会の調査などからクロヅルと確認され、頭に成鳥特有の赤い模様が見られないことなどから、幼鳥とみられることが分かった。性別は不明。

 クロヅルは同区に広がる水田で過ごすことが多かった。住民らは一緒に見守っていた愛鳥家からアドバイスを受け、クロヅルが落ち着いて過ごせるよう配慮。人が押し寄せるのを防ぐため情報を公開しないよう区内外に依頼した。住民に犬の散歩コースの変更を依頼したこともあった。

 そうした努力でクロヅルは約5カ月滞在した。葉山室長は「飛来した場所に滞在するかは最初(の環境)で決まる。長く滞在できたのは、住民らの配慮によるものが大きい。豊富なえさや水があったことも要因」と分析した。

 熱心に観察していた吉岡隆繁区長(74)は「サギなどと一緒にタニシやドジョウを食べていた姿が印象的だった」と振り返る。観察を続ける中で、愛着心を持った住民は少なくなかったようだ。

 町外へ飛び立ち約2カ月が過ぎた。吉岡区長はちょっぴり寂しそうだが「また11月に来てくれるといいね」と"再会"を楽しみにしている。

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