●金沢学院大生、感性に磨き
12日まで珠洲市で開催中の奥能登国際芸術祭2023(北國新聞社特別協力)は市内に点在するアート作品群のうち、3カ所で鑑賞者が1万人を超えた。会期最終盤の10日も多くの来訪があり、金沢学院大文学部の1~4年生77人が大谷町のスズ・シアター・ミュージアム「光の方舟(はこぶね)」を訪れた。学生は能登の民具や生活用品を使って人々の営みを表現したアートに触れ、感性に磨きをかけた。
劇場型の民俗博物館である「光の方舟」は、かつて祭りのもてなしで使われた御膳(ごぜん)や農機具、漁網、古い家電製品などを光と音と映像で演出し、能登の営みをアート作品として鑑賞できる。芸術祭実行委員会事務局によると、9月23日の芸術祭開幕から9日までに1万6200人を超える人が訪れ、作品群の中で最も鑑賞者が多い。
3年の櫻井初実さん(20)は「使われなくなった民具に生命が宿り、アートとして息を吹き返したようだった」と語り、4年の遠(とお)塚谷(づかたに)陽さん(22)は「能登の営みは脈々と受け継がれており、守り伝えていくことの大切さを感じた」と話し、それぞれ作品に刺激を受けた様子だった。
これに先立ち、学生は清水町の旧清水保育所で展示されている「時を運ぶ舟」を訪れた。揚げ浜式塩田で砂の運搬に使われた砂取舟から無数の赤い糸を張り巡らせた作品で、9日までの鑑賞者は約1万5600人。三崎町の旧小泊保育所にある、塩を使った作品「記憶への回廊」は約1万1500人に達した。
●旧粟津保育所9700人
「光の方舟」や「時を運ぶ舟」「記憶への回廊」は過去の芸術祭でも高い人気を誇ったアートで、2023の新規作品では、カラフルな積み木を使った参加型アート「おもちゃ」のある三崎町の旧粟津保育所で、鑑賞者が約9700人と1万人に迫る。旧保育所には「おもちゃ」のほか、常設展示の作品「Autonomo/図書室」もある。