福井の味、純けい(親鶏)を使ったカツは、かむほどに味わい深い。県産コシヒカリとの相性を最優先に考え、たれは、みそベースのネギゴマと、塩の2種類を用意した。カツに添えられたもやしのナムルは、濃厚な味わいの箸休めにぴったりだ。
親鶏は地域の特色を出せて利用価値が高いが、加工に手間が掛かる。店主の天谷健二さん(34)は、この丼の開発に1年以上を費やした。筋を丁寧に切り、厚さをそろえて揚げ時間を短縮。硬くなるのを防ぐため、低温で火を通す。試食に付き合った友人たちの忌憚(きたん)ない意見も参考にし、味と食感の改良を重ねた。
天谷さんは2012年12月、現在の場所に飲食チェーンのフランチャイズ店を開いた。通称勝山街道沿いという絶好の立地。奥越へ向かう観光客を取り込む計画だった。
ところが、時期を同じくして近くの中部縦貫自動車道の工事が本格化し、危機感が募った。一方、店内を見渡すと女性の一人客も多く、個食化の流れを実感した。「福井のどこにもない物を作れば、人は来る」。新メニューを引っ提げて独立を果たした。
休日こそソースかつ丼の方が売れるものの平日は、純けいかつ丼を求めるリピーターが多く訪れる。「一人でも多くの人に食べてもらいたい」。福井愛が詰まった一品を手に、天谷さんが目指すのは東京進出だ。
純けいかつ丼は777円(税込み)。営業時間は午前11時~午後10時(日・祝日は午前10時~午後9時)。年中無休。永平寺町松岡室。電話0776(61)0047。