福井県敦賀市の観光誘客施設としてリニューアル開館する敦賀赤レンガ倉庫(国登録有形文化財、同市金ケ崎町)の耐震補強工事が完了し30日、報道陣に公開された。北棟ジオラマ館では国内最大級の鉄道ジオラマ製作が着々と進んでいる。南棟レストラン館は今後、各店舗が内装を施工し「鉄道の日」の10月14日オープンを目指す。
110年の歴史を持つ赤レンガ倉庫を生かし観光の新拠点にしようと、市が昨年6月に工事に着手。建物内部に鉄骨フレームを建て、レンガ壁とボルトでつなぐなどの工法で耐震性を確保した。
鉄道ジオラマは全長27・5メートル、奥行き最大7・6メートル(約180平方メートル)で、敦賀港が国際的な発展を遂げた明治後期から昭和初期までの敦賀の街並みを再現する。
北陸線、敦賀港線の鉄道を中心に当時のスイッチバック路線、ウラジオストクまで運航していた船舶などを配置。拡張現実(AR)技術を用い、近未来の敦賀の様子も画面で見られるようにする。
製作会社は昨年12月から東京でパーツ製作に取りかかり、7月から赤レンガ倉庫に搬入し、現場で本格的な作業を進めている。担当者は「現在や近未来を表現するジオラマが主流の中で、古き良き歴史を再現・演出しているのが大きな特徴」と話す。
一方のレストラン館は、できるだけ赤レンガの内壁を見せるような造りで、無垢(むく)材のフローリングをしつらえたレトロな雰囲気。地元海鮮やイタリアンなど3店舗が出店の準備を進めている。事業費はレストラン館の内装工事を除き約11億円。
この日は敦賀工高建築システム科2年の25人が「夏休み工場(現場)見学」の一環で訪れ、関係者から工事概要などの説明を受けた。大和田智也君(17)は「歴史が感じられ落ち着いて食事できる雰囲気」と話していた。
ジオラマ館の入館料は大人400円、小学生以下200円。
敦賀赤レンガ倉庫は1905年に米国の石油会社が貯蔵庫として建設。延べ床面積は北、南棟とも約540平方メートル。2003年に市所有となったが、耐震問題が浮上し工事や活用法を検討してきた。