福井市立郷土歴史博物館の秋季特別展「大名華族たちの明治」が16日、開幕する。福井藩16代藩主松平春嶽とゆかりの侯爵鍋島直大(なおひろ)(旧佐賀藩主)、伯爵立花寛治(ともはる)(旧柳川藩主家)にスポットを当て、彼らの残した実物の舞踏会衣装や手紙、工芸品、写真など北陸初公開を含む約100点を紹介する。開幕に先立ち15日、内覧会が開かれ、同館ボランティアらが、近代日本の発展を支えた華族たちの世界に一足早く触れた。
大名たちは明治に入ると華族と呼ばれる特権階級に位置付けられ、外交官や天皇の側近、あるいは農業振興や執筆に携わるなど、さまざまな立場で国家の発展に尽力した。同展は、春嶽の実家である田安家を介した松平家、鍋島家、立花家とのつながりを紹介しながら、明治国家の黎明(れいめい)期に彼らが何を考え、どう行動したかを探る。
会場でひときわ目を引くのが、イタリア公使を務めた鍋島直大と妻の栄子(ながこ)が、1887年4月に内閣総理大臣伊藤博文邸で催された仮装舞踏会で実際に着用した衣装。直大の衣装は18世紀後半のフランス貴族の姿を模したもので、華やかな舞踏会の様子を思い起こさせる。
福岡県柳川に農事試験場を開いた立花寛治に関する展示では、1910年に完成した立花家西洋館で使われた家紋入りの豪華なティーセットやフランスのガラス製酒器が並び、当時の伯爵家の生活ぶりが伝わってくる。
春嶽のコーナーには、旧領越前での故事逸事を記録した「真雪草紙(みゆきぞうし)」といった多様な著作物などを紹介。福沢諭吉から贈られた著書「通俗国権論」(1878年刊)には、春嶽の直筆で細かい描き込みがあるなど、70年に公職を退いた後も、変わりゆく社会を見つめ日本の未来に心を配っていたことがうかがえる。宮内省の役人だった春嶽の息子慶民(よしたみ)が宮中のパーティーで拝領した「ボンボニエール」からは、近代における皇室と松平家のつながりが分かる。
同展は11月23日まで(11月5日休館)。一般600円、高校大学生500円、中学生以下と70歳以上、障害者とその介助者は無料。福井大博物館実習生による関連展示「ことばの文明開化」がある。当時使われていた変体文字やカタカナをクイズなどを交え学ぶことができる。問い合わせは同館=電話0776(21)0489。