紅梅の立ち木が白地の身頃いっぱいに広がり、すそにはスミレ、タンポポの花盛り―。小袖に春の情景を描いた、国の重要文化財(重文)「小袖 白繻子地梅樹春草模様(しろしゅすじばいじゅはるくさもよう) 酒井抱一(ほういつ)筆」が5日から、福井市立郷土歴史博物館の特別展「江戸の小袖の春夏秋冬」(福井新聞社共催)にお目見えする。
小袖は現在の着物の原形で、江戸時代以前の呼び名。3月に始まった同展は、武家の女性たちの四季の装いに焦点を当て、江戸後期の色鮮やかな63点を紹介している。
特別展示するのは、尾形光琳の流れをくむ一流絵師、酒井抱一が直接図絵を手描きした江戸後期の小袖。現存する描絵(かきえ)小袖は極めて少なく、国立歴史民俗博物館に所蔵されている。佐々木佳美学芸員は「1点物の描絵小袖は江戸の女性の憧れだった。墨の濃淡を活かし、一発勝負で描かれた巧みな造形感覚を見てほしい」と来館を呼び掛けている。