JR東日本は16日、5月から運行し長野県内を通るコースもある豪華寝台列車「トランスイート四季島(しきしま)」(10両編成、乗客定員34人)の車両内部を、発着駅となる都内の上野駅で初めて公開した。列車に各1室しかない最上級客室「四季島スイート」と「デラックススイート」には、木曽郡南木曽町の職人が「木曽ヒノキ」で造った浴槽をしつらえた。同社によると、ヒノキ風呂を備えた寝台列車は世界初という。
浴槽は幅71センチ、奥行き135センチ、深さ50センチで1人が湯に漬かれる大きさ。木の温かみが感じられる手触りで、窓越しに車外の景色を楽しめる。同社は設けた理由を「和の伝統を演出できる」としている。
ヒノキ風呂を造ったのは南木曽町吾妻の志水木材産業。志水弘樹社長(54)とこの道54年の平田光治さん(72)が手掛けた。木曽地方産で樹齢150年以上の木曽ヒノキを使った。木目が細かく、最高品質とされる。
2年ほど前からJR側との打ち合わせなど準備に取りかかり、昨年8月に2週間ほどかけて製作。年末、車両に据え付けた。
列車の揺れが湯舟の湯にどう影響するのか調べるために原寸大の模型を作って提供。JR側がテストを繰り返した結果、浴槽内に横長の板を取り付けると波を消す効果があることが分かった。浴槽の縁にも湯が飛び跳ねないような工夫をしてある。
平田さんは「要求に応えるのは、なかなか大変だった」、志水社長は「豪華列車に採用されたことで、技術が認められたと感じている」と誇らしげに語った。JR側は「お客様に喜んでもらえる上質な出来栄え」としている。
四季島は甲信越などを巡る1泊2日のコースと、北海道や東北を周遊する3泊4日コースで運行を始める。