移設した石仏に手を合わせる住民たち=富山市呉羽町

移設した石仏に手を合わせる住民たち=富山市呉羽町

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呉羽山石仏を住民が引っ越し 1カ月かけ

北日本新聞(2017年12月6日)

 閉館した富山観光ホテル(富山市呉羽町)にあった中世の石仏・石塔群を、元々あった場所に近い峠茶屋近くの山中に移す工事がこのほど終わり、5日、現地で完工式が行われた。呉羽山周辺の住民や企業でつくる「呉羽山観光協会」(田畑宏継会長)の役員10人が、資材を担いで山に入り約1カ月かけ完成させ、石仏を次世代へ引き継ぐことができたことを喜び合った。

 移設したのは石に座像を浮き彫りにした石仏や、梵字(ぼんじ)が刻まれた石塔など14~16世紀に作られたとみられる22体。

 峠茶屋付近は江戸時代、寺社仏閣が建ち並び、石仏もこの近くにあった。しかし明治時代の神仏分離令と廃仏毀釈(きしゃく)で一帯は荒廃し、地元住民たちが1975年に石仏をホテルに移設。そのホテルも2016年5月末に閉館し、建物と一緒に壊される恐れが出てきたため、同協会が撤去し、市の許可を得て移設した。

 石仏・石塔は、尾根沿いの散策路脇に2列に並べ、コンクリートの土台に固定した。式典には会員や地元住民ら20人が出席。協会の近島信雄会長代理が「立派に完成してうれしい」とあいさつし、同市梅沢町2丁目の立像寺の松村文潮住職が読経した。

 参加した同市呉羽町の郷土史家、武内淑子さんは「石仏を大事にしてきた人たちの思いを、後世に伝えることができてよかった」と喜びを語った。中世の石仏がまとまって残っていたことにも注目し「この場所が歴史的に信仰の場であった可能性も考えられ、歴史を解明するきっかけになるかもしれない」と期待を話した。

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