1857(安政4)年閏(うるう)5月3日に薩摩藩士の西郷隆盛が福井藩士の村田氏寿(うじひさ)に宛てた書簡が、幕末明治福井150年博のメイン展示として9月22日に始まる福井県立歴史博物館(福井市)の特別展で全国で初めて公開される。福井藩が藩政改革の参考とした薩摩藩との技術・学術交流を裏付ける内容。西郷の青年期の書簡は貴重で、村田に対するきめ細かな心遣いからは繊細な一面がうかがえる。
同館によると、書簡は福井藩士の子孫に当たる県外在住の個人が所蔵しており、作家で西郷隆盛研究の専門家の桐野作人さんが2010年に雑誌で掲載。西郷の手紙493点を収めた「西郷隆盛全集」(1976~80年刊行)には収録されていない。150年博に合わせて県が借り受け、複数の専門家から真筆との評価を得た。縦16センチ、横47・1センチ。
村田は、薩摩藩主の島津斉彬への面会と軍事・教育施設の視察のため鹿児島を訪れ、西郷と面会。西郷の書簡はその翌日に記されており、斉彬への面会を承諾する旨とともに、「ご面会して心のうちを打ち明けてしまい、かえって卒爾(そつじ)(失礼)の至りです」「拝顔の折に(斉彬との面会を待たせたことを)陳謝いたします」と、村田への敬意や気遣いを表している。
県文化振興課は「(豪快なイメージの)西郷の別の一面がみてとれる。NHK大河ドラマでの注目に合わせて、こうした一面も知ってもらいたい」としている。
西郷は当時29歳でこれ以前の書簡は22点しか知られておらず、桐野さんは「この時期の西郷の動向が分かる貴重な史料」と指摘。62年に流罪になった沖永良部島で書家川口雪篷に習った書体がよく知られており、それ以前の荒さのある書体を示す史料としても重要だという。
特別展「幕末維新の激動と福井」は22日から11月4日まで開催する。