のれんに手をかける南さん。左奥に見えるのが石動駅=小矢部市石動町

のれんに手をかける南さん。左奥に見えるのが石動駅=小矢部市石動町

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名物の駅うどんが移転 石動駅隣の「麺類食堂」

北日本新聞(2018年11月26日)

 あいの風とやま鉄道石動駅(小矢部市石動町)隣のうどん・そば店「麺類食堂」が30日、駅周辺の開発に伴い、半世紀続けてきた現在の店舗での営業を終える。常連客に愛されながら、街の移り変わりを長年見つめてきた。12月から北口そばの新しい店に移り、2代目店主の南一久美(いくみ)さん(55)は「お客さんがあって今がある。これからも人とのつながりを大切にしたい」と語る。

 麺類食堂は1948(昭和23)年、南さんのしゅうとめの故ふみさんが木造だった以前の石動駅横で営業を始めた。68年の現駅舎完成に伴い、隣に店を構えた。店内はカウンターの8席のみで、ホーム側の窓から丼を受け取ることもできる。

 南さんが店を手伝うようになったのは結婚後間もない83年から。国鉄の列車が走り、商店街は活気にあふれていた。石川県から嫁いだ南さんは「都会だなと思いました」と当時の雰囲気を振り返る。2006年にふみさんが亡くなってからは、2代目店主として年中無休で店を切り盛りする。メニューは昔から変わらず、うどんとそばだけ。地元食材にこだわった優しい味わいだ。

 午前6時に店を開けると、昔ながらの客が続々訪れる。「50年近く利用してくださる方もいます。常連さんは顔を見れば、注文の品が分かりますよ」と南さん。子どもや孫を連れて、2世代3世代にわたって通う小矢部市民も多いという。

 小矢部の街は近年、目まぐるしく変わってきた。15年3月に北陸新幹線が開業し、JR北陸線はあいの風とやま鉄道が引き継いだ。南さんは「時代の流れを間近で体験している」としみじみ語る。特急列車は走らなくなり、待ち時間にホームで丼を受け取る人はほとんどいなくなった。一方、これまで見られなかったような客も利用するようになった。15年7月にオープンしたアウトレットモールで働く都会的なファッションに身を包んだ若者たちだ。

 駅周辺も開発が進む。27日からは新しい駅舎に切り替わり、駅の南北を結ぶ「南北自由通路」の利用が始まる。現在の駅舎跡地に図書館が建つため、麺類食堂は北口そばに移転することが決まった。

 街の風景は一変するが、南さんはメニューや間取りを変えず、のれんも同じものを使う。「店を守っていく」という思いからだ。12月7日からの営業を控え、「『寂しい』って思う暇もないほど忙しい。新しい店も、お客さんにとって温かい場所でありたい」。充実感あふれる表情で語った。

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