木や紙からなる立体造形作品の見えない場所に使っていた結束バンドや留め具のソックパス。自然を愛し、環境破壊に警鐘を鳴らす作品も手がける松本三重子さん(福井県大野市)にとっては、自らや見る人をだましているような罪悪感があったという。同市のCOCONOアートプレイスで開催中の個展は「自然不自然展」と銘打ち、自然素材に人工物を組み合わせたアートをあえて打ち出している。
福井市美術館で10年以上続く表現団体「ブランノワール」の公演の舞台芸術をはじめ、大がかりな立体造形も手がける松本さん。自然素材だけでは強度を保てない場面にいつも頭を悩ませてきた。
救いになったのは建築家、藤森照信さんの「科学技術を自然で包む」という考え方。縄文時代の住居を思わせる原初的な建物の構造体に、鉄や鉄筋コンクリートが使われていることを知った。展覧会は「自然素材と人工物の良さを上手に取り入れて、自分が納得できる作品を追求していく」という宣言だという。
象徴的なのは、5種類の素材をそれぞれ木枠の中に稲のはさばのようにぶら下げて収めた連作の平面作品「HASABA」。稲穂やクロモジの枝を使った作品の自然素材ならではの力強さに対して、結束バンドを使った作品の白くつややかな美しさは決して見劣りしない。
作品は2003年から15年間で手がけた21点。舞台芸術を手がける作家らしく、古民家を改装した空間を過不足なくまとめ上げている。