小松市本折町の真宗大谷派本光寺で昨年6月から制作が進められていた和室のふすま絵が、1日に完成した。多田眞住職(69)が今年6月に古希を迎え引退するのを前に、地元作家に依頼していた。最後に同寺の門徒らが筆を入れ、淡い色合いの絵に、にぎやかな人々の姿が添えられた。多くの人の思いがこもった大作に仕上がり、多田住職は「素晴らしい記念になった」と目を細めた。
ふすま絵を手掛けたのは、同市赤瀬町のアーティスト森秀一さん(66)。続きの和室3部屋にある計52枚のふすまをキャンバスに見立て、「大自然の恵みに感謝」をテーマにパステルカラーで太陽や月、水の流れを模した抽象画を描いてきた。同寺に泊まり込んで作業する日もあった。
1日夜は多田住職や同寺の門徒でつくる「円満の会」のメンバーら約20人が集まった。森さんが制作工程を説明後、参加者は筆を執り、薄墨でふすま絵に1人三つずつ点を入れた。森さんは「みんな一つだということを表現したい」と、それぞれの点を胴体にして描き加え、両手を挙げた躍動感ある人の姿に仕立てた。
自身も円満の会メンバーである森さんは「こんな機会はもう二度とないだろうし、会の皆さんに参加してほしかった。大作に携わることができて光栄だ」と感慨深げに語った。
多田住職が6月に引退した後は、娘婿の多田明弘副住職が後任に就く予定となっている。多田住職は「憩いの場としてふすま絵がある部屋を活用してほしい」と期待を寄せた。