粟市長に猩々のラベルの候補を紹介する中村社長(右)=野々市市役所

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喜多家幻の酒「猩々」復活 野々市、半世紀ぶり

北國新聞(2021年2月23日)

 国重要文化財である喜多家住宅(野々市市本町3丁目)の幻の日本酒「猩々(しょうじょう)」が22日までに、半世紀ぶりに復活した。産学官が連携し、酒蔵でわずかに残っていた酵母菌を頼りに3年越しで醸造に取り組んできた。今後、市民の意見を参考にラベルや瓶のデザインを決め、全国展開を図っていく。
 喜多家は江戸末期から酒造業を営み、白山伏流水を使う猩々は地元で広く愛されたが、大手メーカーの商品との競争激化に伴い、1975(昭和50)年ごろに生産が終わり、同時期に酒造業も廃業した。敷地にある酒蔵や酒米の貯蔵庫など残されていた4棟の酒造関連施設が2019年末、重文に追加指定された。
 市は、北国街道にぎわい創出プロジェクトとして喜多家の保存活用を進める中、18年度に地酒復活に乗りだした。研究を委託された県立大の小栁喬准教授(食品微生物学)が19年3月に喜多家の酒蔵から、酒の醸造に欠かせない酵母菌の一種を発見。提供を受けた中村酒造(金沢市)が今年度、試験醸造していた。
 市で栽培された酒米「五百万石」と、伏流水である市の地下水を使い、酵母の特性をつかみながら同社野々市工場で醸造した。純米酒ながら、精米歩合を低くした仕様で純米吟醸酒に近いという。今後、中村酒造が一般販売する。
 ラベルは、喜多家が昭和10年代に使っていたものや、市の花木「ツバキ」を題材にしたものなど復刻モデル9種類が候補に挙がっている。3月20、21日の「ののいち椿まつり」(北國新聞社後援)で披露し、アンケートの結果を参考に決定する。試飲会も行われる。
 22日、市役所を訪れた中村酒造の中村太郎社長は「辛口ですっきりとした飲みやすい味に仕上がった」と報告した。粟市長は「念願かない大変うれしい。北国街道の歴史も含めて野々市の良さを再認識してもらえる。猩々はその象徴となる」と語った。

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