幕末福井の歌人橘曙覧(あけみ)が詠んだ「食」の歌に着目した企画展「江戸時代の食事情(前編)~曙覧さんの場合~」が、福井県福井市橘曙覧記念文学館で開かれている。まんじゅうを好むなど曙覧の食生活がうかがえる歌約20首や資料10点を紹介している。
歌や学問の道に生き、つつましやかな生活を送った曙覧は、食の風景を詠んだ歌を多く残している。「たのしみは~」で始まる独楽吟では、全52首のうち10首が食にまつわるものであるなど、何げない食生活にも普遍的な楽しみを見いだした。
「たのしみは 木の芽(=お茶、煎茶のこと)淪(に)やして 大きなる 饅頭(まんじゅう)一つ ほほばりしとき」という歌は、まんじゅうが好物だった曙覧らしい独楽吟。酒も大好きで「とくとくと 垂りくる酒の なりひさご うれしき音を さする物かな」と、ひょうたんから酒をつぐ音の素晴らしさを詠んでいる。
松平春嶽からマツタケをもらった時の礼状や旅の食事の様子を記した日記もあり、江戸時代の庶民らの食事情も垣間見えてくる。
8月29日までで、9月からはお殿様にスポットを当てた後編を予定している。会期中無休。午前9時~午後5時15分。観覧料100円。中学生以下や70歳以上、障害者手帳を持つ人は無料。問い合わせは同館=電話0776(35)1110。