日本遺産「小松の石文化」を代表する石材「観音下(かながそ)石」を原料に使った九谷焼が誕生した。細かく砕いた観音下石を混ぜて焼き上げた素地(そじ)は、表面に残った粗い粒子がざらざらとした手触りとなり、独特の風合いに仕上がった。13、14日に開催される「日本遺産サミットin小松」で紹介し、小松の石とものづくりの技術を発信する。
九谷焼作家の北村隆さん(75)=小松市高堂町=が日本遺産のPRになる品を作ろうと企画し、同市の東木製陶所と約1年かけて作った。
九谷焼の原料は同市花坂町で採れる花坂陶石で、細かく粉砕した後、粘土にして成型する。通常は花坂陶石のみで作るが、北村さんは粘土の10~15%を観音下石にして焼き上げた。
北村さんによると、観音下石は鉄分が多く、焼成すると焼け焦げ、素地には砂粒ほどの大きさの黒い粒子が残る。九谷焼の素地の白さを残すため、あえて粒を大きくし、釉薬の量を少なくして手触りを楽しめるようにしたという。
直径15センチの茶わんや水差し、菓子鉢を計40個作った。北村さんは各地で開く自身の個展に飾り、九谷焼の魅力とともに小松の石文化を来場者に伝える。作品の一部は小松市に寄贈する予定である。
日本遺産サミットでは、認定を受ける全国104団体のうち92団体が会場にPRブースを設ける。小松市のPRブースは県こまつ芸術劇場うららに置き、観音下石を使った九谷焼などを展示する。
北村さんは「土の混ざり具合によって、全く同じものは作れない。独特の風合いで、面白みのある作品に仕上がった」と話した。