富山市桜町でバー「HYDEOUT(ハイドアウト)」を経営するバーテンダー、川内大樹(ひろき)さん(32)が、南砺市利賀地域に自生するクロモジを使ったトニックウオーターとジンを完成させた。川内さんによると、クロモジを用いたトニックウオーターとジンは珍しく、「県産の材料を使ったお酒を通じて、富山の魅力を紹介していきたい」と意欲を見せる。
クスノキ科のクロモジは、枝を折ると爽やかな香りが漂う。高級なようじの材料としても知られる。利賀地域では「クロモジ茶」として加工品にしている。
川内さんは、クロモジがビールの香りに近いことに注目し、アルコール飲料に合うのではないかと考えた。県産素材をPRし、林業の活性化につながることも狙った。森林調査などを手掛ける南砺市の一般社団法人「moribio(モリビオ)森の暮らし研究所」と協力して採集した。
トニックウオーターは、炭酸水にかんきつ類の果皮エキスや糖分、香草を加えたもので、酒を割る時に用いられる。大麦やジャガイモなどから作られる蒸留酒のジンは、カクテルの材料として広く使われる。川内さんは約1年前から、トニックウオーターは佐賀の飲料工場、ジンは北海道の蒸留酒メーカーと、それぞれ試行錯誤を重ね、オリジナルの完成にこぎ着けた。
利賀のクロモジを用いることで、ほのかな甘みの中に爽やかなかんきつ系の風味が楽しめるという。両方を組み合わせることで、「唯一無二のジントニックができる」と喜ぶ。
川内さんは12月5日に富山市のホテルグランテラス富山でイベントを開き、全国から集まるバーテンダーに完成品を披露する。自身の店では特徴を生かしたカクテルを提供していく予定で、「料理とのペアリング(組み合わせ)を楽しむこともできる。富山から世界に発信していきたい」と話した。