松原センター長(左)からトラフグの飼育を学ぶ中さん=能登町越坂の金大能登海洋水産センター

松原センター長(左)からトラフグの飼育を学ぶ中さん=能登町越坂の金大能登海洋水産センター

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能登町の漁業者 トラフグ養殖にトライ

北國新聞(2022年1月7日)

 金大能登海洋水産センター(能登町)が開発した「金大フグ」の養殖技術を生かし、能登町の漁業者が3月末までに、トラフグの養殖事業を始める。同センターの研究成果が民間で実用化されるのは初めて。石川県内では、高級魚であるトラフグは水揚げ量が少なく、養殖が軌道に乗れば、能登観光の新たな目玉商品になると関係者は期待している。

 養殖事業に乗りだすのは漁業会社「中漁業部」(能登町羽根)。同町小浦の海沿いにある倉庫を活用し、水量約5・5トン分の水槽を設置する。センターでふ化したトラフグの稚魚約600匹を約2年間飼育し、1キロ程度の大きさまで育て、町内の飲食、加工業者らに出荷する計画だ。

 養殖には、センター長の松原創(はじめ)教授が2020年に確立した「オーガニック養殖」の技術を活用する。共食いや寄生虫対策として炭酸水や茶に含まれるカテキンを餌に添加する独自の養殖法で、薬剤を使わないため環境負荷が少なく、コストも従来の10分の1以下に抑えられる。

 稚魚は能登町沖で捕獲した個体から採卵してふ化させる。他海域のトラフグの遺伝子が入り込んで生態系を乱す心配がなく、世界農業遺産に認定された「能登の里山里海」の環境保全に配慮する。

 中浩二社長は「後に続く人たちが養殖を始めやすいよう筋道を付けたい」と意気込んでいる。

 石川県沿岸は、輪島市が水揚げ量で何度も日本一に輝くなど国内有数のフグの漁獲量を誇るが、マフグやゴマフグが多数を占め、高級魚のトラフグは記録が残る1995年以降、10トンを超えた年はなく、2020年は2・7トンにとどまった。

 センターは、トラフグの養殖事業が軌道に乗れば、マスやヒラメの養殖技術も民間に転用していく方針で、松原教授は「開設当初からの目標である『新産業の創出』に一歩近づいた。新たな漁業の歩みを着実にしたい」と話した。

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