福井県三方郡美浜町太田の休耕田を活用して作る「太田そば」をいつでも手軽に食べられるようにしようと、集落営農に取り組む「太田enjoy農楽舎」がこのほど、乾麺を完成させた。豊かな風味が残るよう試行錯誤を繰り返し、来年度以降に一般販売する考え。10日、集落内で試食会が開かれ「生麺と遜色ない」と住民の舌をうならせた。
約25年前、集落内で増えてきた耕作放棄地を減らし景観も保とうと、育てやすいソバを植えたことが太田そば誕生のきっかけ。特産品化しようと集落営農で維持管理してきた。5年ほど前からは稲作も手掛け、ソバなどと合わせ集落内の農地33ヘクタールのうち11ヘクタールを活用。耕作放棄地はゼロという。
農楽舎によると、太田は昼夜の寒暖差が大きく甘みのあるソバの実ができる。打ち立てそばを町内イベントなどで販売してきたところ、風味や味の良さからファンが定着した。
ただ、太田そばの店はなくイベントでしか提供できないため、新型コロナ禍のここ3年は振る舞う機会がなかった。「いつでも太田そばを食べたい」との住民の声があったため、昨年5月に乾麺化を企画。新潟県の業者の協力を得て、半年以上かけ完成させた。
試食会には町長や地元の民宿経営者ら約30人が出席。これまでの経緯を紹介する映像を見た後、おろしそばととろろそばで試食した。農楽舎が特にこだわった豊かな風味やつるんとしたのどごしに、参加者から「おいしい」「生麺と言われても分からない」と感想が上がっていた。同町菅浜で民宿を営む男性は「地元の食材としてお客さんにお勧めできる」と話していた。
試作品は約150袋(300食)あり、本年度は飲食店や民宿などの町内事業者に卸してPR。需要があれば来年度にも一般に販売する考えだ。集落のソバの収穫量は約4トンで、これまでJA福井県に出荷してきた分を製造に回すという。
農楽舎の代表は「若狭美浜太田そば」としてブランド化したいといい、「今や区民のほとんどがそばを打てるほど定着している。美浜の新しい名物にしていきたい」と意気込んでいた。