日本の婚礼衣装の変遷をひもとく福井県福井市立郷土歴史博物館の秋季特別展「寿(ことほ)ぎのきもの ジャパニーズ・ウェディング」(福井新聞社共催)が10月8日、同博物館で開幕する。人生で最も華やかな通過儀礼である婚礼の場で、主役の花嫁や儀式に立ち会う女性たちを彩ってきた打ち掛けや振り袖などあでやかな約160点が並ぶ。
婚礼儀式が最も洗練された形で執り行われたとされる近世から近代。▽江戸時代の大名家の婚礼▽江戸時代の町人の婚礼▽伝統の継承と革新が起きた明治~昭和初期の婚礼―の3章構成で変遷を追う。
武家の婚礼衣装に多く用いられたのが、波と岩に松竹梅鶴亀をあしらった吉祥のしるし「蓬莱(ほうらい)模様」。それを白地にあしらった「白綸子(りんず)地蓬莱模様打掛」や、空色の生地にあしらった越前松平家伝来の「空色縮緬(ちりめん)地蓬莱模様打掛」が第1章を彩る。宇和島藩伊達家伝来の化粧道具や鏡台など花嫁に持たせた調度品も並ぶ。
結婚式が商家にも広まった江戸時代。第2章の見どころは滋賀県の近江商人の旧家に伝わる白、赤、黒の打ち掛けだ。「三つ揃(ぞろ)え」として一式まとめて残っているのは極めて貴重。「色直し」で花嫁が順に着用したとみられる。
おなじみの3色に加え、青色の花嫁衣装の存在も近年の研究で分かってきた。色直しに青を含む「四つ揃い」を用いるのは格式高い家柄の証しとされる。
第3章では、結婚式文化のすそ野が庶民にも広がった明治期以降に焦点を当てる。「三つ揃え」の打ち掛けを順に着るスタイルが、3色の振り袖を一度に重ね着する「三つ重ね」へと簡略化され、大正から昭和初期には西洋の「ブラック・フォーマル」の影響で黒の振り袖が流行した。
婚礼衣装が変化を遂げる中にあって、旧家にはしっかり古式が受け継がれた。信濃屈指の豪商「田中本家」(長野県)に伝わる「四つ揃い」の打ち掛けを展示。京友禅の老舗「千總(ちそう)」(京都府)所蔵の打ち掛けは、江戸時代の武家の婚礼衣装と同様の菱(ひし)形模様をあしらった綾(あや)織物だ。
30日午後2時から県国際交流会館で、本展を監修した共立女子大の長崎教授(同大博物館長)が講演する。展覧会のサイトから予約が必要。
会期は11月23日まで(10月31日休館)。一般900円、70歳以上700円、高校大学生600円。中学生以下と障害者、介助者は無料。半券持参者は500円で入館できるリピート割引あり。着物姿の来場者は100円引き。福井市立郷土歴史博物館=電話0776(21)0489。