観光客にＪＲ小浜線を利用してもらおうと、福井県若狭町生倉の旅館「天然温泉　岡三屋　彩（いろ）かさね」が、電気自動車（ＥＶ）レンタカーを始めた。同旅館にかかわらず町内に宿泊すれば割引価格で利用できるようにし、地域全体の活性化にも貢献する。三方五湖観光は駅からの２次交通が課題とされる中、彩かさねの代表、岡勝之さん（４９）は「北陸新幹線敦賀開業が迫ってきた。ＪＲ利用客のニーズに応え、嶺南を楽しんでもらいたい」と話す。

　岡さんによると、宿泊客のうちＪＲ小浜線を利用するのはわずか１割程度。さらに、県道三方五湖レインボーライン（美浜、若狭町）が自動車専用道路で、路線バスが通っていないことを知らずに訪れる観光客もいるという。「がっかりして帰ってほしくない。小浜線を残すためにも、できることはないか」とレンタカーを企画した。

　自然豊かな三方五湖にちなみ、環境に配慮したＥＶを導入。４人乗りのＢＭＷ「ｉ３」はカップル向けとし、５人乗りで家族向けの日産「リーフＮＩＳＭＯ」の計２台を用意。岡さんは「走行音が静か。窓を開けて三方五湖の空気を楽しめる」と薦める。

　料金は１日１万５千円、半日で７５００円だが、町内に宿泊すれば１日１万円、半日５千円に割り引く。「北陸新幹線開業後、敦賀駅以西に小浜線で呼び込みたい。周遊観光を促し、地域が潤うようにしたい」との思いからだ。

　総事業費は約６００万円。持続可能な新規事業を応援する「若狭町ＳＤＧｓ地域経済好循環事業補助金」に採択され、約８割の助成を受けた。

　レインボーラインは１０月１日に無料化され、さらなる誘客が期待。岡さんは「民間から嶺南を盛り上げていけたらうれしい」と話していた。

　予約、問い合わせは彩かさね＝電話０７７０（４５）３３７７。