時間の経過を感じさせる素材を銅版画で表現する松宮史恵さん。漂着物だけでなく、潮風を受けて傷んだ海辺の建物もモチーフにする=福井県福井市松本1丁目のギャラリーサライ

時間の経過を感じさせる素材を銅版画で表現する松宮史恵さん。漂着物だけでなく、潮風を受けて傷んだ海辺の建物もモチーフにする=福井県福井市松本1丁目のギャラリーサライ

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銅版画作家・松宮さん個展 素材と対話、描く〝記憶〟

福井新聞(2023年2月10日)

 福井県福井市の銅版画作家、松宮史恵さんの個展「fragment」が2月28日まで、同市松本1丁目のギャラリーサライで開かれている。漂着物など時間の経過を感じさせるモチーフが中心。対象を観察し、ニードルで線や点を刻むプロセスは「モノが宿す"記憶の断片"と向き合う行為」という。

 生まれはおおい町。海を見て育ち、ビーチコーミングが好きだった。個展タイトルは「破片」の意味。古里の浜辺で集めた陶器のかけら、渦巻き模様の貝殻、フジツボが付着した岩の一部などがモチーフ。繊細に表現した18点が並ぶ。

 「この陶器はどこの誰に使われ、どんな物語を経てきたのだろう」。例えばそんなことを考えながら、防蝕(しょく)膜が塗布された銅板にニードルの先端を当てる。物言わぬ素材との対話の始まり。「過ぎた時間という見えないものを描きたい」

 彫り終えた銅板を薬品に浸す。彫ったことで防蝕膜が剥がれ銅がむき出しになった部分が腐食し、へこむ。そこにインクを詰めて刷る。エッチング技法だ。薬品の濃度や温度次第で銅の腐食具合が変わり、線や色、陰影の出方を左右する。薬品の微調整、これも物言わぬ相手との対話。

 福井大で美術を専攻してエッチングに出合い、大学院で表現の幅を広げた。今は創作活動の傍ら、NPO法人「E&Cアートベース」の中心スタッフとして展覧会の企画運営にも携わる。

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