常連客と会話を楽しむ宮川さん(右)と長女の光代さん(右から2人目)=金沢競馬場

常連客と会話を楽しむ宮川さん(右)と長女の光代さん(右から2人目)=金沢競馬場

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金沢競馬場の「お母さん」  売店に立ち続けて半世紀

北國新聞(2023年5月17日)

 金沢競馬場が八田町の現在地に移って今年で半世紀。移転当初から場内スタンドの売店に立ち続ける84歳の女性がいる。常連客は親しみを込めて「お母さん」と呼び、談笑を楽しむ姿は競馬場の風景の一つだ。娘も一緒に店先に並び、地元ファンと交流しながら、28年前に他界した夫が残した店を守っている。

 「しばらく見んかったけど元気やったかいね」。今月9日、スタンド棟2階に構える売店で、宮川節子さん=八田町=はいつものように客と会話を弾ませていた。

 節子さんが営む「宮川売店」が誕生したのは1973(昭和48)年春。競馬場の移転開設に伴い県が公募した出店に、夫の光一さんが応募し、抽選で営業の権利を得た。

 地方競馬ブームの当時、金沢競馬場には1万人以上のファンが訪れた。売店はレースの合間にパンや飲み物などを買い求める客が途切れず「昼前から夕方まで、ゆっくり顔を上げる暇がないほど」(節子さん)の忙しい日々が続いた。

 数年後には、短大生だった長女の木村光代さん(60)も手伝うようになり、馬券の当たり外れに一喜一憂するファンを相手に商売を続けてきた。

 客の多くは常連。世間話に花を咲かせ、時には愚痴に耳を傾けることも。明るい性格の母子の周囲には笑い声が響く。今春には節目を祝う造花が50年来のなじみ客から届いた。

 金沢競馬場の入場者は最盛期の5分の1ほど。節子さんは「場内にある公園で子どもも遊べるし、こんないい所はないんだけどね」と惜しむ。光代さんはかつての存廃論議を振り返り「金沢の財産だと思うし、大切にしてほしい」と語る。

 客との触れ合いが最大の楽しみだという節子さん。「体が動く限り、店に立ち続けたい」と笑顔を浮かべた。

 金沢競馬場のスタンド棟では移転当初から6売店が営業している。2店舗が個人営業で、4店舗は競馬場周辺の八田、大場、才田、南森本の各町会が運営している。

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