金沢市の香林坊大和8階ホールで開催中の第26回総合花展金沢展(石川県いけ花文化協会、北國新聞社主催)は前期2日目の25日、着物姿の愛好者グループらが続々と訪れた。会場には、5日に震度6強の地震に見舞われた珠洲市の出品者の力作も。自然と向き合ってきた華道家たちが花や木の力を借りた華やかな作品が、被災地に癒やしとエールを送っている。
●珠洲の出品者「元気届ける」
珠洲市宝立町鵜飼の泉敏子さん(78)=池坊・常任理事=は余震が続く不安を抱えながら、23日の生け込みに臨んだ。近所の家には立ち入りが「危険」と伝える赤紙が貼られ、自身も足の踏み場もない家で過ごす。見附島も崩落した。見慣れた景色が変わった衝撃に、心が沈んだという。
自然の脅威を痛感したが、前を向かせてくれたのもまた、自然だった。「花を生けながら元気をもらっている。今回の花展は何としても出たいと思った」
小学生から華道を始めて60年以上になり「花が生きがい」という。今回は珠洲焼の花器に、イボタの新緑、動きのある木の皮で勢いを出し、紫のパンダ、ピンクのスプレー菊を生けた。昨年の地震に続き、珠洲焼の窯がまた壊れたとの話も耳にし「花で地元に元気を届けることができればうれしい」と語った。
志賀町直海の日野理敦さん(68)=古流松照会・常務理事=は生命力の強い野バラに能登の復興への願いを重ねる。「何十年も前から花材に使おうと考えていた。とびきり元気な木で枝ぶりも良い。地震に負けず頑張ろうという気持ちになれる」と力を込めた。
能登町宇出津の上田久留美甫さん(62)=嵯峨御流・会員=は青や黄色のカスミソウ、赤いグロリオーサなど虹をイメージして色とりどりの花材を生けた。自宅は無事だったが、珠洲の友人の実家が被害を受けたと聞いた。「カラフルな花は見るだけで幸せな気持ちになる。見る人の心が少しでも晴れやかになってほしい」と話した。
能登の海をイメージした花器に能登の松や、枯れた黒柿のボク、新芽の出たナツハゼを対比させ、新たな芽生えを表現した秀作も来場者の目を引いた。
総合花展には15流派248人が前後期に分けて出品し、前期は130点が並んでいる。前期は26日までで、後期の生け込みのため午後3時に閉場する。後期は27~29日。入場料は600円(高校生以下無料)となる。