福井県坂井市の県教育博物館で、イチョウの精子を世界で初めて発見した福井市出身の植物学者、平瀬作五郎(1856~1925年)をテーマにした特別展が開かれている。放映中のNHK連続テレビ小説「らんまん」のモデルとなった植物学者、牧野富太郎の功績にも触れており、62点の資料を通して平瀬らの偉業をたどる。10月1日まで。
平瀬は絵の才能を買われ、32歳で現在の東京大理学部に画工として就職。教授が講義に使う掛け図や論文の植物図などを描く仕事をしながら、37歳でイチョウの研究を始めた。
寝泊まりできるやぐらを組んでイチョウの木に登り、毎日イチョウを採取、顕微鏡で観察し、精子を発見。この功績がたたえられ、1912年に日本で最も権威のある学術賞「恩賜賞」を受賞した。展示の「帝国大学紀要」には、イチョウの研究に関する平瀬の論文が掲載され、正確なスケッチが載っている。
平瀬が勤務していた植物学教室には、牧野富太郎も在籍していた。生涯で1500種類以上の植物を命名し「日本の植物学の父」として知られる牧野だが、平瀬からの標本提供を受けて新種の判断材料にしたものもある。学名には「Hirase」の名が使われており、親交を物語っている。
ほかに平瀬が挿絵を描いた植物学の教科書、恩賜賞の賞碑、牧野が出版した大型の植物誌「大日本植物志」などが並ぶ。41歳で大学を去った平瀬が歩んだ生涯や関係する研究者たちとの交友や功績の紹介もある。
展示の担当者は「世界に認められた平瀬の功績に注目し、ドラマで話題になっている牧野富太郎との関係性も合わせて見てもらえたら」と話していた。
入場無料。午前9時~午後5時。月曜(祝日の場合は翌日)休館。7月23日、8月12日に同館職員による展示説明会がある。先着15人。申し込みは同館=電話0776(58)2250。