米スミソニアン国立アジア美術館が所蔵する、金沢ゆかりの絵師俵屋宗達筆の「扇面散図屏風(せんめんちらしずびょうぶ)」の高精細複製品が27日、金沢美大に京都文化協会とキヤノンから寄贈された。同美術館の所蔵品は「門外不出」で、緻密な複製を制作することで名品の「里帰り」が実現した。同日、「日本美術の名品」展(北國新聞社後援)が始まり、石川ゆかりの絵師を中心とした高精細複製品6点が展示された。
琳派(りんぱ)の祖、宗達の手による六曲一隻の「扇面散図屏風」は江戸時代(17世紀)に描かれ、高さ154・5センチ、幅362センチ。保元(ほうげん)・平治の乱や伊勢物語などを描いた多数の扇子が金屏風にちりばめられている。
京都文化協会とキヤノンは「綴(つづり)プロジェクト」と銘打ち、撮影や画像処理といった最新のデジタル技術と、金箔を用いた装飾などの伝統工芸の技を合わせ、鑑賞の機会が限られた名品の複製を制作、自治体や社寺などに寄贈している。
「扇面散図屏風」は加賀にあった記録が残り、宗達のものとされる墓が金沢にある縁から、金沢美大へ贈られた。県内の施設への寄贈は初めてとなる。
寄贈式では郡司典子キヤノン執行役員サステナビリティ推進本部長がプロジェクトの概要を説明した。山崎剛金沢美大学長が「美術史の授業や企画展示、子ども向けのワークショップなどさまざまな活用を考えたい」とあいさつした。
●「松林図屏風」と競演、1日まで展示
金沢美大で開幕した「日本美術の名品」展では、七尾生まれの画聖長谷川等伯の「松林図(しょうりんず)屏風」や、宗達と琳派の流れをくむ尾形光琳の「風神雷神図屏風」が競演するなど、国宝や重要文化財の複製がガラスケースなしで展示され、筆遣いや質感まで再現された作品に来場者が目を凝らした。写真撮影も可能となる。入場無料で12月1日まで。