建築物と現代アートを楽しむ「マツモト建築芸術祭」が23日、松本市の松本城公園内にある旧市立博物館を主会場に開幕する。同館は昨年10月の新博物館オープンに伴い、取り壊される予定。「消えてしまう建築物を記憶してほしい」と中心市街地の建築物を巡る形だったこれまでと異なり、3回目の今年は主会場に多くの作品を集める。会場では、出展するアーティストたちが制作を始めている。
約20組が出展予定で、旧博物館では各展示スペースの準備作業が進む。出展者の一人で現代美術家の中島崇さん(52)=東京=は、外から見た建物全体を「作品」にする。梱包(こんぽう)に使う透明なフィルムで外壁を覆い、風に揺れたり光を反射したりするような作品になるという。
中島さんは8日、雪が積もった屋上に上がり、ロープに取り付けたフィルムを12メートル下の地上に向かって下ろす作業を繰り返した。建物は1周300メートル、フィルムの横幅は50センチで、12日間かけて全体を覆う予定だ。中島さんは「ここに博物館があったことを、改めて知ってもらうきっかけになる作品にしたい」と話した。
総合ディレクターのおおうちおさむさん(52)=東京=は旧博物館を「モダンなデザインなのに松本城と調和した素晴らしい建築」とし、取り壊しを前に「多くの人の記憶に残すことで、建物の価値を高めたい」と話した。
観光事業者らでつくる実行委員会が主催。3月24日まで。新博物館(大手3)と信毎メディアガーデン(中央2)もワークショップ(参加型講習会)などの会場になる。実行委は会期中の来場者誘導などを担うボランティアも募集中。希望者は芸術祭ホームページから申し込む。問い合わせは実行委(電話0263・87・8631)へ。