福井県小浜市内の農業法人が、コウノトリの住みやすい環境づくりへ、同市国富地区の田んぼで減農薬、減化学肥料による米作りを始めた。収穫米はブランド米「幸(こう)の舞(まい)」として販売、売り上げの一部を関係機関、団体に寄付し保護活動を後押しする。また餌となる生き物の生息環境を守ろうと、田んぼの水を冬場も張り続ける「冬水田んぼ」にも着手する。
取り組むのは株式会社「今富の宝」(同市木崎、赤尾嘉則社長)。今春、環境に配慮した特別栽培米の認定を取得し、国富地区にある田んぼ3ヘクタールに5月中旬、ミルキークイーンとコシヒカリを田植えした。コウノトリが営巣する人工巣塔近くで減農薬、減化学肥料の農業に取り組むことで、コウノトリの餌になるカエルやドジョウなどの生き物が生息できる環境づくりを進める。
赤尾社長の大伯父は国富地区で「コウノトリの郷づくり推進会」会長を務めた宮川さん(享年85)。長年、コウノトリが生息しやすい環境づくりに尽力しながら、2021年の57年ぶりのコウノトリのひな誕生を見ることなく、前年にこの世を去った。宮川さんの遺志を継ぐ形でコウノトリを育む農業に挑戦する。
収穫したブランド米「幸の舞」は、コウノトリが羽を広げ飛ぶ様子を描いたパッケージにし、今秋にも市内の道の駅などで販売する予定。
また収穫後には「冬水田んぼ」にも取り組む。来年5月の田植えまで水を張ったままにし、コウノトリの餌となる多様な生き物を育む環境を維持し、生態系の保全につなげる。コウノトリのふんなどによる抑草効果やコメの栄養になるなどメリットもあるという。
赤尾さんは「コウノトリは小浜の宝。農業をしながら貢献できれば」と話している。