起伏に富んだ新潟県十日町・津南地域の風景やアートを眺めながらツーリングする「ツールド妻有」実行委員会(伊藤嘉朗実行委員長)が、2024年度の自転車活用推進功績者として、国交大臣表彰を受けた。地域の活性化につながったことが評価され、メンバーは「地元の協力のおかげ。手伝ってくれた方々に喜んでもらえてうれしい」と語った。
表彰は2018年度に創設され、自転車月間の5月に行われている。24年度の表彰は国交省であり、 全国で4団体、1個人が受賞した。十日町市によると、受賞は新潟県で初めて。
ツールド妻有は東京在住の建築家である伊藤さんが、06年の大地の芸術祭で企画した。「展示作品を見る移動過程を作品にできたら面白い」。妻有地域の棚田や里山、作品群を巡る自転車ツーリングそのものを、アート作品に見立てるコンセプトだ。コースは120キロ、90キロ、70キロの3区分。120キロは高低差2000メートル以上で、アップダウンを繰り返す難コースでもある。
小規模で始まり、参加者500人に達した時を、伊藤さんは「壮観、感動」と振り返る。現在は予想を超える1000人規模となった。今年は芸術祭の開催年で、過去の開催年と同様に、参加者が芸術祭カラーの黄色のオリジナルジャージーを着用するため、ツーリング風景は圧巻。「全員同じジャージー着用は珍しい。日本初ではないか」と伊藤さん。「動く彫刻のようだ」と伊藤さんに感想が寄せられたという。
10カ所の補給地点では、地元の野菜や住民の手作り料理が並ぶ。公式なもの以外にも、住民が自宅前で麦茶を振る舞うなどしている。実行委事務局の小針伸広さんは「一般市民から手を振って応援してもらい、大会参加者からは一体感があると好評だ」と地域に感謝する。
例年約100人のボランティアが補給地点の運営やコースの看板設置、誘導作業などに携わる。2024年は8月25日に開催し、中里中の全校生徒が授業としてボランティア活動を行う。
「子どもたちにはツールドに参加して、地域外の人が語る妻有の良さに響いてほしい。ツールドの時期になると、子どもたちが帰ってきて、手伝いや参加するような流れができればいい」と小針さんは展望を語る。
2024年8月の開催で17回目を迎える。伊藤さんは2000年、初回の芸術祭で建築作品を出展している。その後は建築家として出展していない理由を尋ねられ、こう答えた。「ツールド妻有は年1回開催だが、毎年開けば作品の恒久設置と変わらない」。そして「僕よりも地元がエネルギーを出してくれていて、続けられている」と感謝した。
◇「ツールド妻有」 2024年は8月25日に開催。定員は1000人、7月7日まで募集する。現在800人弱が応募。申し込みはスポーツエントリーのサイトから。