白山市の白山比咩神社は幕末の白山に現れ、疫病の流行を予言したと伝わる「双頭(そうとう)の鳥」を描いた絵馬札を作り、19日、「疫病撃退」のお守りとして頒布を始める。二つの白い頭を持つ鳥が「自らの姿が厄よけになる」と語ったと記された文献にちなんだ。参拝者の自宅などに飾ってもらい、感染が拡大する新型コロナウイルスの一日も早い終息を祈願する。
絵馬札は縦6センチ、横9センチの木製で、双頭の鳥のイラストとともに「安政四年 加賀國白山 双頭の神鳴る鳥」と記した。台紙には白山最高峰の御前峰(ごぜんがみね)(2702メートル)から撮影した御来光の写真を入れた。
同神社によると、双頭の鳥は1857(安政4)年ごろに出された文献「安政雑記」に載っていた。文献は剣術師範の藤川整斎(せいさい)と名乗る人物が江戸の風説などについて解説している。
文中に二つの白い頭を持つ鳥の絵が描かれ、この鳥が加賀国白山に現れ「9割方の人が死に至る疫病が流行し、自分の姿が厄よけになる」と話したと記されていた。
安政雑記は国立公文書館(東京)が所蔵している。コロナ禍で神社側が文献と鳥の存在を知り、「無病息災祈願」として絵馬札に活用することにした。
鳥の一部が白く描写されていることから、白山にも生息していたライチョウではないかと推測する有識者もいる。神社によると、高山帯に生息することから天に最も近い鳥とされ、雷を制し、雨をつかさどる存在として古来より信仰されていたという。
絵馬札は1枚千円で頒布する。担当者は「不思議な鳥にあやかり、心の不安を少しでも和らげてほしい」と話した。