日章旗を眺める山下さん(右)と岡本さん=白山市福祉ふれあいセンター

日章旗を眺める山下さん(右)と岡本さん=白山市福祉ふれあいセンター

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亡父の日章旗帰還 米兵遺族から白山の山下さんに

北國新聞(2019年6月14日)

太平洋戦争末期の沖縄戦が終結して23日で74年。元日本兵の父親を沖縄で亡くした白山市笠間町の山下弘さん(77)のもとに13日までに、元米兵の遺族から父親の日章旗が返還された。激戦の地で肌身離さず持っていたと思われる「日の丸」を受け取った山下さんは「父親に見守られているようで感動した。いつか旗を持って沖縄を訪ねたい」と感涙にむせんだ。
 石川県遺族連合会の調査によると、山下さんの父朱一(しゅいち)さんは太平洋戦争が開戦した1941(昭和16)年12月に出征、旧陸軍に入隊した。西南諸島で戦い、45(同20)年6月26日、35歳の若さで死亡した。
 日章旗は米ミシガン州に暮らすジョン・マイヤーズさんが沖縄戦に従軍した父親から譲り受けた。大きさは縦70センチ、横100センチ。「武運長久」の文字とともに、朱一さんの親族や仕事仲間ら約200人の名前が寄せ書きされている。
 旧日本兵の遺品の返還活動をしている米NPO「オボンソサエティー」を通じて5月29日に山下さんの自宅に届いた。マイヤーズさんの手紙が添えられており、「いずれお互いの心が癒やされ、あなたが安らぎを見い出せることを願い、旗を届けます」とつづってあった。
 朱一さんは、山下さんが生まれて間もなく出征し、遺骨や形見は残っていない。旗を手にした山下さんは「父親の記憶はないが、近くに感じる。戦後、女手一つで育ててくれた母親にも見せてあげたかった」と涙をにじませた。
 白山市笠間地区遺族会の岡本孝好会長(77)によると、会員の高齢化が進み、戦争の記憶が風化してきている。副会長を務める山下さんは「子供や孫の世代に戦争を語り継いでいかなければいけない」と決意を示した。

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