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遭難死の47%単独登山者 過去5年間、県警まとめ

信濃毎日新聞(2019年8月7日)

 県内で2018年までの5年間に起きた山岳遭難で、死者の約半数、行方不明者の9割近くが単独登山者だったことが6日、県警山岳安全対策課への取材で分かった。自分の好きな日程で登ることができ、同行者とペースを合わせる必要のない単独登山の人気は近年高まっているが、危険とも背中合わせの現実が浮き彫りになった。今年の夏山でも行方不明者3人のうち2人は単独行動で、県警は登山届の提出や小まめな連絡など、万が一のときに備えた意識付けを呼び掛けている。

 同課によると、過去5年間の死者数は年間43〜60人で推移し、このうち単独登山者は16〜33人を占めた=グラフ。5年間全体では死者計259人のうち、47%に当たる121人が単独だった。同じ期間の行方不明者数は年間3〜6人で、単独は3〜5人。5年間では行方不明者計23人のうち87%の20人が単独登山者だった。

 同課によると、近年の登山は社会人山岳会などグループが減る一方、単独行の人気が高まっている。県警の山岳遭難救助隊員が講師になり、県内外で開く安全登山講習会では、参加者から「仲間とスケジュールを合わせようとするとなかなか合わない。1人で登った方が気楽」といった声が聞かれるという。

 同課は、自分の都合で目的地を決められ、同行者を気にせず自分のペースで登れるのが人気の理由と推測。一方で「過去5年間の発生状況を見ても、単独登山が遭難の危険性が非常に高い登山形態であることが示された」と指摘する。

 今年の夏山で行方不明になった人のうち、北ア穂高連峰や槍ケ岳を目指していた千葉県の30代男性は、7月24日に上高地から入山し約3時間登った岳沢で、友人と携帯電話で連絡を取り合って以降、行方が分からなくなった。家族から長野県警に遭難の届け出があったのは5日後の同29日で、今のところ、登山届が確認できておらず、目撃情報もないため捜索範囲が絞れていない。

 県警山岳遭難救助隊の櫛引知弘隊長は「単独登山は自力で救助要請できない場合が少なくない。最悪を想定して入念に登山計画を立て、家族や友人に行き先を伝えた上で、登山計画書も提出してほしい」と要望。登山中は、山小屋の電話や携帯電話で家族や友人に小まめに連絡を取り、万が一遭難した場合にも、早めに気付いて捜索範囲を絞れるよう求めている。

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