歌舞伎の始祖とされる「出雲阿国(いずものおくに)」を題材にした新作オペラの公演が22日、福井市のハピリンホール能舞台で行われた。「和を拓(ひら)く、新しいオペラのカタチ」をテーマに、越前和紙を用いた舞台美術や地元バレエスクールのダンスも花を添え、和とオペラの融合した世界が観客を魅了した。
小劇場オペラ「出雲阿国」は全3幕の日本語作品。オペラ演出家の角直之さん(東京)が主宰するプロジェクトの一環で制作、これまで島根や東京、千葉などで公演した。オペラを身近に感じてもらおうと、福井公演では子ども向けに舞台美術などのワークショップも開いた。
物語は、阿国と傾奇者(かぶきもの)の名古屋山三郎(さんざぶろう)との出会い、山三郎に恋心を抱く菊の3人の関係を描く。福井市のソプラノ歌手東園(ひがしその)さんが阿国を演じ、鯖江市出身の松田晏菜(あんな)さんのピアノが物語の世界観を奏でた。正面に設けた越前和紙のスクリーンが、雨や流れる雲などの情景を映し出してシーンを彩った。
第1幕では坪田バレエスクールのメンバー12人が、阿国の「ややこ踊り」をイメージしたダンスを披露。3人が交錯する思いを歌い上げ、山三郎と菊の死でクライマックスを迎える。東さんは2人の非業の死を嘆き芸の道に生きようと決意する阿国を、高らかに歌い演じ、会場から大きな拍手が送られた。
公演は福井市と、同市の第三セクターまちづくり福井などが企画した。