長岡藩が倹約の精神を説いた「十分盃(じゅうぶんはい)」の精神を広めようと、陶器製の新商品が新潟県長岡市内の雑貨店で販売されている。従来の商品は大量生産ができず高価だったが、飾り部分を簡略化したことでまとまった数を生産できる。担当者は「欲張らず、ほどほどにというメッセージを伝えたい」としている。
十分盃は、酒を8分目以上つぐと、中央の飾りの内部に細工された管を通って底から全て流れ出る構造になっている。長岡藩3代藩主の牧野忠辰(ただとき)が、質素倹約の精神を家臣たちに伝えるために作らせたとされる。
新商品を販売しているのは、和雑貨の店わがんせ。2011年からアルミ、木升、陶器の3種類の十分盃を販売してきた。「酒を飲むときは陶器製がいい」という声が多く、記念品として大量の注文が来ることもあったが、まとめて生産するのが難しかった。
2年前に岐阜県の窯元に依頼して開発を進めた。試作では水が自然に流れ出ないといった難しさもあり、底にある穴を調整するなどして完成までに1年以上かかった。
新しい十分盃は真ん中の飾りを簡素化し、酒の容器にも使われたひょうたんの形にしたのが特徴だ。価格も従来品の6千円に比べて抑えることができた。40、50代の男性を主なターゲットに見据え、贈り物としての需要も見込む。
わがんせを経営するよしや(土合2)の川上恵子社長(53)は「長岡といえば花火、日本酒が名物だが、十分盃といってもらえるように広めていきたい」と話している。
3500円(税抜き)。JR長岡駅ビル「CoCoLo長岡」内や、リバーサイド千秋内のわがんせで販売している。