新潟市江南区の北方文化博物館は、豪農伊藤家が集めてきた収蔵品の一部を展示する企画展「お宝公開展」を5月30日まで開いている。日本に上陸した南蛮人たちの姿を描いた屛風(びょうぶ)や、法隆寺から譲り受けた貴重な品々が並ぶ。明治時代後期から昭和初期にかけて大地主として栄えた伊藤家の歴史と財力を伝えている。
同館の母体となった伊藤家の歴代当主は東京や京都の文化人と親交を深め、美術品を収集していた。戦後、農地解放でほとんどの田畑を失い、1946年に博物館を設立してからは財政難に陥ったが、歴代当主は文化財として後世に伝えるために美術品を1点も売却せず、同館は美術品の一部を定期的に公開してきた。
展示は昨年、テレビ番組の取材で訪れた専門家から美術品を高く評価され、放映後に市民からの反響が大きかったことを受けて企画。鑑定を受けた作品を中心に13点を並べた。
特に価値が高いと評価された六曲一双の「南蛮渡来図屛風」は江戸時代初期の作品と伝わる。それぞれ高さ約1・5メートル、幅約3・5メートルで、南蛮人が船に乗って上陸し、交易する様子や南蛮寺に向かって行列する様子が生き生きと描かれている。明治後期に旧三和村(上越市)の伊藤家親戚から譲り受けたと伝わり、これまでほとんど公開していなかった。
「百万塔」は、奈良時代に造られた高さ約21センチの木造の小塔。現存する世界最古の印刷物「陀羅尼(だらに)経」を納めている。当時100万基作られ、明治41(1908)年に伊藤家が法隆寺に維持基金を贈った記念に法隆寺から贈られ、証書とともに展示した。江戸時代後期から明治時代に活躍した漆芸家、柴田是真(ぜしん)が作った蒔絵(まきえ)の飾り棚などもある。
佐藤隆男副館長は「ほかの美術品とはひと味違う貴重な品ばかり。自分の目で見て情景を感じ、心を癒やしてほしい」と話した。
入館料は大人800円。問い合わせは同館、025(385)2001。