第30回記念公演伊那能が20日、伊那市の県伊那文化会館で開かれた。重要無形文化財総合保持者の坂井音重さんの三男、音晴さんら約30人が出演し、能の「土蜘蛛(つちぐも)」、狂言の「二人袴(ばかま)」を披露。約750人が鑑賞した。
土蜘蛛は、平安中期が舞台で、世の中を混乱させようと僧侶の姿に化けたクモが源頼光を襲い、頼光の家臣が退治する粗筋。家臣と土蜘蛛が相まみえる場面で最高潮を迎え、土蜘蛛が武士に向けて無数の糸を放ったり、刀をよけるために跳ねたりと躍動感のある動きで観客を魅了した。二人袴は、滑稽な動きで会場を笑いに包んだ。
県能楽連盟や市、信濃毎日新聞社などでつくる実行委員会が主催。昨年は新型コロナウイルスの影響で中止したため、開催は2年ぶりとなった。伊那東小学校6年の伊藤寛悟(ひろのり)君(12)=伊那市日影=は「能を見るのは初めてだけど、耳が慣れて途中から言葉をよく聞き取れた」と笑顔。坂井音重さんは都合のため、出演しなかった。