長野県下伊那郡大鹿村に伝わる地芝居「大鹿歌舞伎」(国重要無形民俗文化財)が16日、3年ぶりに観客を入れ、同村鹿塩の市場神社で開かれた。通常は千人ほど入るが、事前に申し込んだ300人に限定し、かけ声も禁止。訪れた人は、秋晴れの空の下で繰り広げられる熱演に、大きな拍手で応えた。
平賀源内作の「神霊矢口渡(しんれいやぐちのわたし) 頓兵衛住家(とんべえすみか)の段」など2演目を上演した。「神霊―」は、渡し守の娘が一目ぼれした落ち武者を命がけで逃がす物語。落ち武者の命を狙う父親に切りつけられながら、必死に助命を請う迫真の演技には、多くのおひねりが投げ込まれた。
初めて観賞した中塚芳二さん(61)=高森町=は「役者も観客も楽しめる地芝居のいい時間を過ごせた。また見に来たい」と話した。
大鹿歌舞伎の定期公演は、新型コロナウイルスの影響で2020年は中止、21年は無観客でオンライン配信した。保存会長で、今回自らも出演した熊谷英俊村長は「観客からストレートに反応が返ってくると、演じていてやりがいがある」と、有観客での公演再開を喜んでいた。